土木デザイン設計競技 景観開花。2017

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株式会社 オリエンタルコンサルタンツ

高速神奈川7号横浜北線 新横浜換気塔・馬場換気塔・子安台換気塔

高速神奈川7号横浜北線(北線)は、首都高横羽線と大黒線の生麦JCTから第三京浜の横浜港北JCTをつなぐ約8.2㎞の路線である。そのうち約7割区間の「横浜北トンネル」は3箇所の換気塔を有し、そのデザインは、北線トータルデザインコンセプト「URBAN∝NATURE(次世代都市空間と自然の調和)」の理念を基軸に"景観創出型換気塔"としてデザインを実施した。具体的には、①無機質な換気塔から脱却したデザインの創出②素材・色彩・テクスチャーを駆使した環境デザインの展開③緑を効果的に配し、地域に溶け込むデザインの創造④専門家を交えた約10年間に及ぶきめ細かなデザインの検討の4点に留意している。

それぞれの換気塔内部設備は極力、地下階又は低層部に集約し、外形は面取り・分節化等によりスレンダーなシンボル性に配慮しつつ、巨大さを減じている。外壁面は、コンクリート化粧型枠(スリット)仕上げとし、陰影をつけることで圧迫感を低減すると共に、土色系のカラーコンクリートを用いる等エイジングにより、周辺環境に馴染みやすいデザインとした。また、街路等に近接する低層部の外壁面は、塔部との素材を変化させ、タイルを用いるなど、暖かみがあり、無機質なそれとは異なるテクスチャーとした。外壁材はモックアップ(原寸模型)を製作し、横浜環状線景観アドバイザー会議による現地確認を複数回行いながら、きめ細かな検討により仕様決定した。周辺の川や地形への一体感を創出するため、効果的に緑を配し、地域に溶け込んでいる。

(2017年グッドデザイン賞受賞)

白虹橋(はっこうばし)

本橋は,京都府宇治市にある世界遺産平等院から宇治川を約2km上流に向かった場所に、国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所がダム再開発事業の一環として、旧白虹橋の下流側に新しく架け替えた橋梁であり、平成29年3月に完成した。白虹橋の約400m上流にはアーチ式ダムの天ケ瀬ダムがそびえ、周囲は自然豊かな風光明媚な景観が残る渓谷であり、秋の紅葉時期には多くの観光客が散策を楽しむルートにもなっている。

本橋の設計にあたっては、ダム放流に備えて工事中も計画水位以上の桁下空間を確保しなければならず、また橋台背面には地域の生活道路が走っているが、工事中も現道交通を確保しながら施工しなければならない等、治水計画や施工上の厳しい制約条件をクリアする必要があった。

橋種選定では、多数ある形式の中から絞り込んだ5つの構造形式について比較し、橋台や仮設をより小規模に抑えることができ、現道交通への影響や工事による地形改変が少なくて済む「自碇式PC吊床版橋」を選定した。与条件として計画水位高さから1.5m以上の桁下余裕を確保しなければならなかったこともあり、一般的な吊床版橋と比べて下床版のサグ比が約半分に抑えられたスレンダーなシルエットの橋梁となっている。上床版を両端が広がった平面形状とし、下床版を3次曲面で造形したことでクジラの尾を思わせるようなユニークなデザインとなっている。トラス材には角鋼管を採用し、側面から見たときに角が立つように配置して細く見せるよう工夫し、格点部を床版の下に埋め込むことですっきりとした納まりを実現させるなど細部までデザインの工夫を凝らしている。

白川 緑の区間

阿蘇を水源とする白川が、熊本市中心市街地を流れる区間の河川改修事業である。この緑量豊かな河川景観は,「森の都くまもと」を代表するものとして市民に愛されてきたが、一方で洪水の危険性が高く、熊本の中心部が水浸しになる可能性がある区間であった。国や熊本大学が中心となり、20年以上をかけて多くの市民と合意形成を行い、15mほど川幅を拡げたり、薄く低い堤防を築くことによって、洪水の危険性を大きく減少させる整備を行った。

また同時に、「市民に親しまれる水と緑の拠点づくり」を整備テーマとし、①現在の風景を活かした将来の景観づくり、②緑の拠点にふさわしい植栽計画、③親水性に配慮した水辺空間を3つのポイントとして計画が進んだ。

弊社の設計において、①における照明やトイレ、サインといった付属物は、経年変化によってより風景に馴染むデザインとするよう配慮した。②については、高木は樹木間隔を広めに配置し、1本1本の樹木がのびのびと成長するよう工夫することで、かつての緑量ある河畔林が再生され、再び地域のシンボルとなるよう配慮した。③については、水辺への眺望やアクセス性に配慮した橋詰め階段の検討を行った。